合わされた心理の過程はこのひとにも内包されている。自然主義的作品として「他力信心の友」は小寺菊子自身、代表作と認めている作品である。北陸の旧家の沒落と、生来の因業と信心との奇異な混合に生きるおやへ[#「おやへ」に傍点]の悲惨な最期とを、執拗濃厚な自然主義の筆致で描き出している。だが、この同じ作者が、結婚した女の家庭生活と仕事との間にある摩擦や、良人の生活感情と自身の女としての心持との間にある距離。或は恋愛において不幸に陥った女などについて描くとき、自然主義的な筆端は変化して、いつも或る正義感、或る人道的感情で動かされている。そして、この作家の正義感なり人道的感覚なりは、水野仙子の精神におけるほどつきつめられたものでなく、日常の平安をのりこしてまでもゆこうとする性質のものでないために、つまりは常識に譲歩して、自然主義的な真実追求の執拗さもそこで喪われているのである。
ポーランドの婦人作家エリザ・オルゼシュコ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ァが「寡婦マルタ」を書いたのは、一八七五年、日本で云えば明治八年頃であった。イプセンの「人形の家」が発表されるより四年前に書かれているこの小説で
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