うに今日も彼等は来た。
 が、大抵の者は小ざっぱりした装《なり》をして、下駄まであまりひどくないのを履いている。そして、町の婦人達の来てから帰ったまでのことを、細大洩さず話しては、あの、家まで聞えて来たほどのどよめきの最中に起っていたことに対して、婦人達はどんなに、臆病に意気地がなかったかということを嘲笑した。
 裾にすがりついて離れなかったばっかりで、いくらかをせしめた狒々婆や、善馬鹿をそそのかした甚助の子のことなどは、さも面白い勇ましいことのように彼等を喜ばせたものらしい。
「あの婆様もあげえな体あして案外《あんげえ》偉《えれ》えわえ。あのときの醜態《ざま》あ見せてあげとうござりやしたぞえ」
 皆は、自分等の貰った金高《かねだか》を争って私共に聞かせた。
「俺ら五円貰った!」
「そんじゃおめえ、こすいでねえけえ。俺らなんかたった三両ほかくんねえぞ」
 そして、あんな大袈裟な前触れで来ていながら、たったそれっぽっちずつほか呉れないで、有難がらせようとしたって無理だとか、金の割当て方が不公平だとかいう不平が、彼女等が来ない前よりもっとひどく、町の者への悪感を強くさせた。
 私は来る者毎
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