はあ三人の命がたすかりやす。御恩は決して忘れましねえ」
と云うと、三人一かたまりになって、満足げに行ってしまい、人々の騒ぎはよほど鎮まった。
さすがの婦人達も暫くは、気抜けのしたように立ったまんま、どうすることも出来ずにいた。
けれども間もなく、会長夫人は辛うじてその威厳を回復して、群集一同を恐ろしい目で睨み廻した。そして、黙ったまんま皆の先に立って歩き出した。
何という帰り道のみすぼらしさだろう! 甚助の子は遠くの方から、馬の古鞋《ふるわらじ》をなげつけたり、犬を嗾《けしか》けたりしてついて行ったのである。
十五
町の婦人連は来た、金を撒いた、そして帰って行った。
ただそれだけのことである。けれどもそのために、狭い村中の隅から隅まですっかり掻き廻されてしまった。
子供等は、盆着を着せられて、村にただ一軒の駄菓子屋の前に、群がってワヤワヤ云っている。
大人どもは、貰った金を、何にどう使うかということで夫婦喧嘩や親子喧嘩をして、互同士の嫉みが向う三軒両隣りに反目を起させた。
けれども、私の家だけは、相も変らず「繁昌」しているのである。
一昨日と同じよ
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