地に出ていた。ブラブラ歩いてそこまで来ると、思いがけず子供等の様子が目に付いたので、傍の木蔭から非常な興味を持って、眺めていた。そして薯のことから、喧嘩からすっかりを見てしまったのである。初めの間は、私はただ厭なものだ、あさましいものだと思っていたけれども、だんだん恐ろしいようになり、次で、たまらなく可哀そうになって来た。彼等に対して一切《ひときれ》の薯は、どれほど勢力を持っているものか。若し私に出来ることなら、うんと厭になるほど御馳走を食べさせて遣《や》りたいというような心持も起ったけれども、とうとう、私はどうしてもあの子供等と近づきになって見ようという激しい好奇心に、すっかり打ち負かされてしまった。
私は、さっさと独りで入って行こうともしたが、何だかばつが悪い。
向うがいくら子供達でも、何だか極りが悪い。で、私は誰か来て私を連れてってくれればと思いながらぼんやりと立っていた。裏口からは、子供等が口の中で薯をころがしたり、互の椀の中を覗き合ったりしているのがすっかり見える。
ちょうど好い塩梅に、そのとき甚助の身内の者で、家が傍だもんで、日に一度ずつ子供ばかりで留守居をしている所
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