べては驚くべき貴婦人らしさで進行して行ったのである。

        十三

 町の婦人連の間に、この計画のあるという噂は、直ぐ私共の耳にも入り、次で村中に拡がった。
 日数が立つままに、だんだんそのことは事実となって来たので、乾いている村の空気は何となし、ザワついて来た。どこでもこの噂をしない所はない。
 貧しい者共は、盆の遊びを繰越して、金も貰わないうちから買いたい物の取捨選択に迷い、彼処《あしこ》の家では俺ら家より餓鬼奴が沢山《たんと》いっから十分に貰うんだろうという羨みなどから、今まで邪魔にしていた子供等を一夜の間に五人も十人も殖やしたいようなことを云っている。そして、たださえ働き者ではない彼等は、こうやって汗水たらして一日働いた幾倍かの物が今に来るのだというような思いに心をゆるめられて村全体にしまりのない気分が漲り渡り始めた。
 が、依然として、私の家には朝から日が暮れるまで、「行けば何《なに》にかなる」と云う者が、来つづけていたのである。
 何だか自分の副業のようにして、愚痴をこぼし哀みを求めて、施されるということは即ち、自分等がどうなるのだということなどを考えもしない、
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