めっきり教会がにぎやかになって来たのである。
そして、今では三代目のこれも恐ろしく人の好い愚直といったほどの牧師が、殆ど女連の御蔭で維持されているような教会を管理していた。
いろいろな意味で大切にされていた先代は、去年の夏脳溢血で、ほんとうに天国に行けそうな死にようをしたのである。
まだ割合に年も若く、絶えず東京風の装《なり》に苦心しているくらいの婦人連は、教会を一つの交際機関として利用していた。そして或るときは説教よりも互の身なりの観察が重要なことであり神の祝福を受けながら着物の柄を考えることが大切であった。そしていかにも「女らしいすべての点」を備えた会合が催されていたのである。
ところが、この八月の二十四日が先代の牧師の初めての命日であるということは、何か変ったこともがなと思っている婦人連にとっては、この上ない機会となったのである。花の日会などという派手な催しのあることを聞いて、胸をわくわくさせながらもじいっと我慢していた人達なので、何か記念の仕事をしようということは、一も二もなく賛成された。
そして、いろいろ評議された末、終に故牧師が埋められているK村の貧民に、僅かずつ
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