することが、皆あまり嬉しくない結果ばかり生むのが、益々辛くなって来たのである。
 とにかく、これ等のことがあるようになってからは、私の囲りには、だんだん沢山「得なければならない」者共が集って来た。
 小さい娘の見る狭い世界から抜けていることの、不利益を知るほどの者は、何か口実を設けては訪ねて来るのである。
 ただ雌というだけのようになった女房共の、騒々しい追従笑いや世辞。
 裸足《はだし》で戸外を馳け廻っていた子供の、泥だらけな体が家中をころがり廻る騒ぎ。
 それ等の、何の秩序も拘束もない乱雑には、単に私の毎日をごみごみした落付のないようにしたばかりでなく、家全体をまるで田舎のよく流行《はや》る呪禁所《まじないどころ》のようにしてしまった。
 祖母やその他家族の不平は、私一人に被さって、子供が炉へ水をひっくり返したのも、下らない愚痴を、朝から聞かされなければならないことも皆私がこんなだからだと云われなければならなかった。
 このようなうちにありながらも、私は出来るだけ彼等に好意を持ち続けようと努めた。
 けれども、いそがしい仕事のあるとき、彼等の仲間になって聞き飽きた、その当人よりよく
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