声に呼び醒された。
私はびっくりして飛び起きた。まだよく目が開かないで、よろよろしながら、
「何!?[#「!?」は横1文字、1−8−78] え? どうしたの?」
と云う私を引っぱって祖母は、雨戸に切ってある硝子窓の前に立たせた。
初めの間は何にも見えなかったが、だんだん目が確かになって来ると、露で曇った硝子越しに、一|箇《つ》の人影が南瓜畑の中で動いているのが見える。
「オヤ!」
額をピッタリ押しつけて見ていると、どうも盗って行くものを選んでいるらしく、体が延びたり曲ったりしている。
「もう朝だというのに。まあ何て大胆な!」
暫くすると、体は延びきりになって、小路の方へ出て来た。手には大きな丸い物を持っている。
南瓜泥棒は、歩き出した。そして、もう少しで畑から出てしまう所へ、スタスタともう一つの人影が近寄って行った。それが祖母であるのは一目で分った。
私は、ハッとした。一体何をどうしようというのだろう? 私は大急ぎで寝間着を脱いだ。そして、出て行って見ると、それはまたどうしたことだ! 私が何ともいえない心持になって、立ちどまってしまったのは、決して無理ではない。
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