を云っているの? そんな大きな年をして馬鹿をおしでない」
 私はちっとも知らなかった。「ほいと」というのは「乞食」を指す方言であったのだ。

        八

 この村の農民共は、子供の教育などということをちっとも考えていない。子供等は生み落されたまま、自然に大きくなって男になり女になりして行くのである。
 もちろん彼等だって子供は可愛い。けれども、すべて単純な感情に支配されている彼等は、子供を育てるにも、可愛いとなると舐殺《なめころ》しかねないほど真暗になって可愛がる。
 が、若し何か気に入らないことや、憎いことをしでもしようものなら、彼等はほんとに可愛さあまって憎さが百倍になってしまう。擲《なぐ》る蹴る罵るくらいはあたりまえで、ひどくなると傷まで負わせて平気である。
 そんなときは、子供だなどという気持はなくただ憎らしい、ただ腹が立つばかりなのである。
 それ故、子供等はよほど健康な生れ附きでないと、大抵は十にならない内に死ぬかどうかしてしまう。
 どんな木の実でも草の実でも、食べたい放題食べ、炎天で裸身《はだか》になっていようと、冬の最中に水をあびようと、くしゃみ一つしない人
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