のようにドサンと仰向けに寝た。そして、大口を開《あ》いて、鼻をグーグー鳴らしながら寝込んでしまった。
 犬がそろそろと首を伸して、彼の手に持たせたまま片端から鮭を食べ始めると、子供等は彼のした下等な身振りの真似をしたりしながら、しきりに彼を起しにかかったのである。
 一人の子は「狐のしっぽ」で鼻の穴をくすぐった。
 蹴ろうが怒鳴ろうが、ゆさりともしないので、図に乗った子供達は善馬鹿を裸体《はだか》にし始めた。彼等は掛声をかけながら、だんだん肌脱ぎにさせたとき、いつの間にかそこにおって、様子を見ていた若い者がいきなり、
「そげえなことーするでねえぞ。天道様あ罰《ばち》いお下しなさんぞ」
と真面目に口を出した。
 皆はびっくりして、いたずらの手を止めて男の顔を見ていた。すると、中でも一番頭株らしい十四五の子は、口を尖《とんが》らして、理窟をこね出した。
「わりゃあ朝っぱらから、おっかあに怒鳴られてけつかる癖にして、俺らの世話焼けるんけ? う?」
「おめえあの人知ってるんけ?」
 一人の子がヒソヒソときくと、急にこの子は得意そうな顔になって、一層冷笑的な口吻で叫んだ。
「うん、知ってっとも!
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