に石までぶつけて、それで済むことなのか?
 私はほんとにあの子供達が厭であった。そして、またいつものようにあのときのことがじき村の噂に上って小《ち》っぽけなおかしい自分が、泥だらけの百姓共の嘲笑の種に引っぱりまわされるのかと思うと、一思いに、あのこともあの子供達も一まとめにして、押し潰してしまいたいほどの心持がしたのである。御飯も食べられないほど私はくさくさした。
 けれども、夕方近くなって、小作男の仁太というのが来て二時間近くも話して行ったことは、私に或る考えの緒口《いとぐち》を与えた。
 彼は、私共の持畑――二里ほど先の村にある――に働いている貧しい小作男で、その男が来ればきっと願い事を持っていないことはないといわれているほど、困っているのである。
 私は彼の衰えた体をながめ、もう何も彼も運だとあきらめているよりほかしようのないような話振りを聞くと、フト甚助のことを思い出した。
 甚助はやはりこの仁太のような小作男だ。
 ああ、ほんとに彼等はこんな気の毒な小作男の子供達であったのだ! この思いつきはだんだん私の心から種々の憤りやなにかを持ち去ってしまった。
 けれども、後にはよく考
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