つや否や、私は反動的に身をねじ向けて見ると、まだすぐ近くの甚助の家の前に、子供等が犇《ひしめ》き合って立っている。
年上の子供は、私が振向くと、手に持っていた小石を振り上げて、威《おど》すように身振りをした。
私は、子供等の方を見ながらのろのろと杉の木蔭へ身を引きそばめて、二度目の襲撃を防ごうとした。
私は、手触りの荒い杉の太い幹につかまりながら、訳もなく大きな涙をポロポロとこぼしたのである。
三
「何ということだ!」
あのときの様子を思い出すと、私の顔はひとりでに真赤になった。なぜ私は、あれほどの恥辱を受けなければならなかったか? 私が彼等に対して云ったことが悪かったか? 私は確かに悪いことは云わなかったというよりほかはない。私は同情していたのだ。ほんとうに淋しいんだろうにと思っていたばかりだ。私にはちっとも嘘の心持はなかった。どこからどこまでも正直な気持でいたのではないか?
私にはどうしても彼等の心持が解せない。それ故あの罵りに対しての憤りはより強く深くなるばかりなのであった。
私は、お前方から指一本指される身じゃあない。
人が親切に云ってやったの
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