うように思われた。
考えて見れば、私が今日までしていたことの大部分は人を恵むということに餓えている心を満たしていたのじゃあないか? 私は彼等に衣服をやり、金をやり、食物をやり、同情したが、それ等は、彼等の一生に対してどんな意味があるのか?
若し私がほんとうに、大きな愛で彼等をつつみ、深い同情で引きあげようとしたのなら、新さんを死なせずに済んだろう!
善馬鹿を酒のみにしないで済んだのだろうに。――
けれども二人は、私がどうも出来ないうちに死んで埋められようとしている。ほんとうに、私がどうもしないうちに、なるだけのことはちゃんちゃんとなってしまったのである。
新さんが、自分の命の尊さを知るまでに私が力づけることは思いもよらないことであった。
私はどうしても、彼等を真に愛してはいない。また愛せない! どうしたら好いのだろう。
私はとうとう失敗してしまったけれども、彼等に対して何かしてやらなければならないという望みばかりが、どれほど私に情ない思いをさせるだろう!
私は、お前方の前には、罌粟粒《けしつぶ》ほどもない人間だったのだ。お前方には、気に入らないことも馬鹿馬鹿しいことも沢
前へ
次へ
全123ページ中121ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング