世界のすべての学者が知っている。アメリカの商業ポスター、広告ビラの勘のよさ、手ぎれいさ。気のきき工合。会社と会社が互にきそうその広告、宣伝術に対して、購買者たる市民の側の選択も、発達している。主婦は自分の生活のほんとの必要にたって、一つの罐づめでも選ぶ。そういう選択、判断がなかったらアメリカの貯蔵食品の今日の発達と品質の向上はあり得なかっただろう。
 その科学的に分析され綜合的に研究され発達しつくしたあらゆる部門の広告が、日本のように今でさえまだ半封建的な幼稚な資本主義国にもちこまれたとき、それは日本の内にどんな反応をよびおこすだろう。若い娘の服装にその反応の特色があらわれた。黒い髪に対して真赤な爪はどんな色彩効果かということは考えられていず、胴《ボデー》長に、ロマネスクのモードの滑稽なあわれさが自覚されていない。商店の広告はアメリカ広告の植民地的真似をしている。自主的な批判力のまだつよめられていない日本の社会の心理に、半封建の精神の特徴である権力追従を恥じない事大主義が横行している。国際的という名をかりて。民主的という名をかりて。そして世界平和という名をかりて。そして、この風潮は事大
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