させることは、ヒトラーの方式であった。その拙劣な真似に、日本の軍部の方式があった。「暁に祈る」が、その名称そのもので実証した。
[#ここで字下げ終わり]

        黄色い特派員
          ――里村欣三の満蒙通信――

 改造社が、里村欣三を満蒙特派員として派遣した。二月号『改造』に「戦乱の満蒙から」という通信をよみ、強く一つのことを感じた。それは、筆者里村欣三が何たる民主主義者[#「民主主義者」に傍点]であろうかという事実とブルジョア・ジャーナリズムはこういう特派員を選ぶに何とうかつであろうかということだ。この文学的表現をもった記事から=ブルジョア報告文学から、われわれは何を知るか? 何も知ることはできない。ブルジョア新聞に書けるだけのことがブルジョア新聞記事のイデオロギー的基礎の上に立って書かれているにすぎない。1、2、と読み進むにつれ、映画のクローズ・アップのように一連の文句が目の前に浮び上った。労農大衆党の黄色い卑屈なスローガン「戦線拡大反対」という文句だ。
 作者が大いに視察記録しようと出かけた意気込みは、ほのかに分る。が、いざ実際、組織強固な帝国主義侵略軍の
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