文芸時評
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)綯《な》いあわせた、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)かん[#「かん」に傍点]で歌留多をとり、
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「抒情歌」について
――その美の実質――
二月号の『中央公論』に、川端康成の「抒情歌」という小説がのっている。印刷して二十三ページもあり、はじめから終りまでたるみない作家的緊張で書かれている。川端康成の近頃の創作の中で、決していい加減につくられたものでないのはよくわかる。
字も読めない子供時代から、かん[#「かん」に傍点]で歌留多をとり、神童といわれたような少女が次第に年ごろとなり三年も前から夢で見ていた青年と、夢で見たままの場面、服装でであいする。
龍江というのがその若い女の名である。龍江には異常な霊の力[#「霊の力」に傍点]があって、海に溺れる運命だった弟の命を救ったり、一ぺんも行ったことのない愛人の書斎に、古賀春江の絵と広重の版画とがかかっていて、雪の降る日背中に赤ん坊を背負った男が偶然雪かきをやらせてもらいに来たりする
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