た息子からの霊界消息をまとめて本にだした。それは「つまり魂が不滅でありますことのあかしを立て、ヨーロッパ大戦争で愛する者を失いました幾十万の母や恋人にこの本をおくったのでありました。」しかし、これはほんとに人間的な不幸へ抵抗する方法だろうか、息子を殺すな! 愛人を殺すな! と幾百万の女を奮い立たせるためでは、決して決してなかったのだ。ブルジョア文学はブルジョア階級のがたつきと一緒に、美のうちにあるべき正しいいきどおりという理論を失っている。そして、ブルジョア文化用具としてのブルジョア・ジャーナリズムの命じるままに、片々たるエロチシズムとナンセンス文学をつくって来た。ところが、階級対立が激化し、帝国主義戦争=大衆の大量的死がブルジョアジーにとって必要となってくるにつれ、文化のいろんな部面に神秘主義が現れて来ていた。
 今年になって、沢山の婦人雑誌が特別附録として、「迷信」「占ない」などの記事を盛んにもりはじめた現象と、この「抒情歌」との間には、切っても切れない血のつながりがある。
 ロシアの一九〇七年反動時代に、インテリゲンチアの間にどんな盛んな勢で心霊問題がとりあげられただろう!
「ゼ
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