二次世界戦争発端」という題名の仮面の下にたくみに満蒙事件の拡大の可能を暗示しているあたり、毒々しいものだ。――
 こうして今日のブルジョア文学のファッシズムへの奉仕あるいは屈従の断面は、僅か二冊の雑誌の中にさえまざまざと反映している。これまでブルジョア作家、労農派の社会民主主義作家たちが必死に守って来た作家としての個性の差異などというものは、めいめいがただどんな音色でそれぞれのファッショの歌をうたうかというだけの僅かな違いを示す以外、無力な意味ないものとなってしまった。

        提出したい問題
          ――徳永直の作品を読んで――

 ファッシズムは大衆の毎日の生活の中に、きわめて現実的なかたちをとって現れている。賃銀切下として、又はブルジョア産業合理化・労働強化、工場内の体育部の反動御用化として、あらわれている。
 大衆はそれをどう感じているか。どうそれと闘おうとしているか。
 徳永直は、「未組織工場」と「ファッショ」と二つに別れて発表された一つながりの小説の中で、この現実をプロレタリア作家の立場からとりあつかおうとしている。
 作者にとってなじみ深い印刷工場が
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