』という作品集を大陸開拓文芸懇話会の選書で出版していられる。
大石氏の題材は多く日本からの移民の生活が扱われているのだけれど、そして大陸開拓の文学というとき満州あたりの移民の生活が考えられているのだけれど、大陸文学というとき、内地の感覚で移民の生活が先ず浮ぶというところに、日本の文学における大陸性の性格が特徴づけられもしているし将来に向っての深い課題をひそめてもいると思われる。
大石さんの小説をみても、移民という立場で働き生きる人々、第二世と云われるその子供たちの生活は、内外とも二つの国に挾まれる苦悩にみたされたものであることがわかるが、日本の文学が世界史の変動につれて将来大陸性をもつようになるとすれば、大陸生活を描く作家たちは辛酸を耐えて、文学の内的世代として移民生活の描写時代を生きぬけなければならないだろう。そして、大陸に生活する日本人という響が今日つたえているテムペラメントそのものの二重性、その間の乖離、そこに生じる大小の悲劇を誠実に生きすぎて、日本の心に一つの雄大な地平線をもたらさなければならない次第だろう。日本の人が日本の在来の心に壮士風のロマンティシズムと感激とを盛って
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