文学の大陸的性格について
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)脂《あぶら》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)「|ほかの神々《アザ ゴッズ》」
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年十一月〕
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『現代アメリカ文学全集』の中にドライサアの「アメリカの悲劇」が出ている。
この間よみかえしてみて、これまでとはちがった新しい感銘をうけた。もと読んだときには、ずいぶん古いことだったけれども、文章のきめの荒さや作者の身についている一つのぬーっとした脂《あぶら》こさが、鼻にぬけるアメリカ英語と共通な反撥を感じさせるようで馴染《なじ》めなかった。今度読みかえすと、やはりこの作品がアメリカを描いた文学として現代古典となる理由がわかった気がした。
アメリカの社会の成り立ちの性質は、この小説の主人公クライドのような貧しい、正統な教育もさずけられていない、孤独な青年の胸のなかにも、出身や栄達の希望と空想とを抱かせる一応のデモクラシーがあるようで、デモクラシーの名とともに燦《きらめ》く富の力はそれ
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