現代文化の最高水準に立たなければならぬプロレタリア文学の重大な課題となるだろう、といっている。
 プロレタリア・ルネッサンスというような表現はハイカラで内容的らしく特に文学青年などの耳にのこる響きである。亀井はこのプロレタリア・ルネッサンスなるものの社会的根拠をプロレタリア革命を内包するところの日本の民主主義革命の特殊性において説明している。然しわれわれが種々な場合に注意しなければならないのは、過去の歴史上ある時期に与えられた名称を、現代の歴史的必然性を示す何か新しい形容詞とともに今日に生かして使う非唯物史観的悪癖である。
 日常に例をとってみると、この頃女の洋服の流行は次第に裾が長くなり、胸の飾帯が高くなり、肩のところで短い袖をふくらましてつけるような工合になってきた。これは考証によれば「アンピール」様式にひどく似ている。では、今日のそういう型をネオ・アンピールと呼ぶとしたらそれは正鵠《せいこく》を得て、内容を説明しているであろうか? 正確でも正当でもない。なぜなら、「アンピール式」が発生した当時のフランスの経済的、政治的情勢は、今日の帝国主義、世界反革命運動の策源地フランスの経済的
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