文学に関する感想
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)正鵠《せいこく》

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(例)日本人の手にかかると[#「日本人の手にかかると」に傍点]
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 林房雄が『中央公論』に連載している長篇小説「青年」は、近頃発表されたプロレタリア作家の作品の中でもっとも多くの論議を引き起したものの一つである。「青年」第一部が発表された当初から、ブルジョア作家、批評家たちは、これこそ読むにたえるプロレタリア文学の出現であるという風な批評を加えた。ある一部のブルジョア・ジャーナリストは「青年」を称讚し、さすがは林房雄である。構想雄大で行文はいわゆるプロレタリア的でない清新の美に満ちていると、さながらその社会的根拠とともに創造性をも喪失したブルジョア文学の陣営内に一人の精力的な味方を発見し得たかのような喝采を送った。
 わがプロレタリア作家同盟および文学に関心をもつ革命的大衆の「青年」に対する感想は、本質においてはそれらのブルジョア批評と明らかに対立する種類のものであった。林が長い獄中生活の後、直ちに野心的な大作に着
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