いものであったろう。
ほんとうの独りぽっちで、気の紛れがないから、考えは始終同じ問題にこびり付いていなければならない。
考えれば、考えるほど、心はさか落しに滅入って来て、どうにもこうにもならなくなる。そこで、仕方がないから、ちょっとばかりの酒でも飲んで炉辺でごろ寝をするような癖の付いたイレンカトムは、従って人の眠る夜になると、否でも応でも眼を覚していなければならなく成ってしまった。
窓の隙間から蒼白くホーッと差し込む雪明りに照らされる陰気な小屋のうちで、彼は死んだような厳めしい静寂と、次第に募って来る身の置処のない苦しさに圧迫され、強迫されて、頭はだんだんと理由の解らない興奮状態に陥って来る。
小屋の中じゅう、どこへ行っても、何ものかが満ち蔓《はびこ》っていて、自分を拒絶したり、抵抗したりするような心持のするイレンカトムは、じっと一つ処に落付いてはいられない。
知らず知らず、ブツブツと口小言を云いながら、あちらこちらと歩き廻る。
そして歩き廻りながら、眠りもしないで、こんなことをしている自分は普通でないなと思って来る。
一体どうしてこうなのだろう?
彼は、炉の火を掻き起
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