ら1字下げ]
「良い眼でよく見て御呉れ。
[#ここで字下げ終わり]
と私に渡す。進まない様に手をのばして遠くの方で見て「いいでしょう」と云って祖母に返すと、すぐ元の場処に仕舞いに行く。
菊太は、自分の希を叶えてもらった嬉しさに何となく輝いた顔になって、身軽に立って女中に消えた火をなおしてもらったり、茶をつぎなおしたりする。
祖母は気の毒なほどいやな顔をして炉の四辺《まわり》に艷《つや》ぶきんをゆるゆるとかけたり、あっちこっちから来た封筒を二つに割って手拭反古を作ったりして菊太の帰って呉れるのを待って居る。
あきるほど茶をのみ、煙草をふかしてから、
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「御暇《おいとま》いたしますべえか、
ほんとに有難うござりました。
来年はきっとなしますかんない。
お鳥もはあ、さぞ喜びますべえて、
お嬢様もはあ、有難うござりやした。
[#ここで字下げ終わり]
と腰をあげる。腰を塵を取る様にパタパタと叩き三つ四つ頭をさげて土間の女中にまで何か云って庭の入口の竹垣に引っかけて置いた、裾の切れた、ボタンもない黒ラシャの茶色になった外套のお化けの様なものをバアッとはおって素頭
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