農村
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)不作《ふさく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)彼等|唯一《ゆいつ》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
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(一)[#「(一)」は縦中横]
冬枯の恐ろしく長い東北の小村は、四国あたりの其れにくらべると幾層倍か、貧しい哀れなものだと云う事は其の気候の事を思ってもじき分る事であるが、此の二年ほど、それどころかもっと長い間うるさくつきまとうて居る不作《ふさく》と、それにともなった身を切る様な不景気が此等みじめな村々を今一層はげしい生活難に陥れた。
企業的な性質に富んで居た此家《ここ》の先代が後半世を、非常に熱心に尽して居た極く小さな農村がこの東北の、かなり位置の好い処にある。
かなり高くて姿の美くしい山々――三春富士、安達太良山などに四方をかこまれて、三春だの、島だのと云う村々と隣り合い只一つこの附近の町へ通じる里道は此村のはずれ近く、長々と、白いとりとめのない姿を夏は暑くるしく、冬はひやびやと横わって居る。
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