をして居て、地蔵眉の下にトロンとした細い眼は性質の愚鈍なのをよく表わして居る。
こんな農民だとか、土方《どかた》などと云う労働者によく見る様な、あの細い髪《け》がチリチリと巻かって、頭の地を包み、何となく粗野な、惨酷な様な感じを与える頭の形恰をこの男は持って居るけれ共、不思議な事には心はまるで反対である。
紺無地の腰きりの筒《つつ》っぽを着てフランネルの股引《ももひき》をはいて草鞋ばきで、縁側に腰をかけて居る。紺無地の筒っぽと云えば好い様だけれ共、汗と塵で白っぽくなり、襟は有るかないか分らないほどくしゃくしゃに折れ込んで、太い頸にからみついて居る。袖口は切れて切れて切れぬいて、大変長さがつまって仕舞って毛むくじゃらの腕がニュッと出、浅く切った馬乗は余程無理をすると見えて、ひどいほころびになってバカバカして居る。股引だって膝の処は穴があいて居るし、何と云う無精な女房なんだろうとさえ思われる。
祖母は此の男に会う事をすいては居ない。
けれ共この家一さい一人手で切り盛りして居るのでいやでも応でも、会わせられるのであった。厭《きら》われるのは願い事がきまって居るからもあるし、それにあん
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