され様とは夢にも思って居なかった。見なれない年若な女が自分達の家へいきなり入ってきて、
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 淋しいだろうの
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 何のと云うので年上の子は何か誤解したのであったろう。他人の親切を、親切として受入れる事の出来ない子達だと思うといかにも「みじめ」な気持にもなるけれ共、私の掛けた親切な言葉は、今まで、今の様な言葉で受けられた事がないので、いかにも気の小さい、気はずかしい様な気持にもなった。
 私は微笑する事も出来ない様に婆さんの顔を見た。
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「礼儀も何も、知《し》んねえからなっし
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と取りなし顔に云いながら、立ちあがった。家の中の事に気を配りながら出るあとについて私も一緒に往還の方へ出ると、そこから杉並木の様な処を透《とお》して真直《まっすぐ》に見えて居る祖母の家へ足を向けながら、婆さんに、
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「晩にでも遊びにお出。
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と云いすてて只った一人足元を見ながら、沈んだ、重い気持で、静かに歩いて居ると小石がひどい勢で飛んで来て、私のすぐ足元で白いほこりをあげ、わき
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