さんは?
 淋しいだろう?
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とやさしい軽い笑をただよわせながら、一番大きい男の子に云った。
 土間に下りて、私を後の方から見て居た子はいきなり大きな声で、
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「ワーッ
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と笑った。
 私は少しいやな気持になった。けれ共、再び、
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「ねえ、淋しいだろう。
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と云った時、
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「お前の世話にはなんねえからなっし。
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と怒叱《どな》られた時ほどいやな気持にはならなかった。先ず、あんまりの返事に私は男の子の顔を見た。上り框の婆さんの傍に立って私を見下して恐ろしい顔をして怒叱《どな》ったのであった。
 私より婆さんの方がなお驚いたらしかった。その児の方を振向くと一緒に手を引っ張りながら、
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「何云うだ。そないな事云うものでねえぞ。
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と云った。
 私の心の中には、一種の「あわれみ」と恥かしい様な気持が湧き上ったのであった。
 私は、ほんとうに只、親切の心から云った言葉をこんな荒々しい言葉で返
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