もあり、ない処もある非常にでこぼこした見るから哀れなもので、畳ばかりではなく床《ゆか》までベコベコになって居た。
婆は一番年上の男の子に、
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「父《ちゃん》は?
母《かか》は?
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と云ってききながら上り框に腰をかけて炉のほだで煙草を吸ったりした。
一人の子の前がはだけて膝っ子僧が出て居るのを祖母がしてやる様に、しずかに可愛がって居るらしくなおしてやりながら、
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「お前《めえ》さま、今まで、こんなむさい家は見なすった事がなかっぺい。
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と云って大きな声で笑った。
私の見なれない着物の着振り、歩きつきに子供等は余程変な気持になったと見えて、誰一人口を利《き》くものがなくて、只じろじろと私ばかりを見て居る。
それをわきで見ながら婆さんは、
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「ひよろしがって居ますんだ(恥かしがって居るのだ)。
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と云う。
私は、田舎の子の眼に見つめられる事にはなれっ子になって居たので格別間が悪《わるい》とも思わなかった。
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「父さんや、母
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