いうことになると、彼女等は、ほとほと途方にくれてしまう。
そして、ごくごく単純な彼女等は私に遣らなければならないものなら、やったってよさそうなものだのに、……町へ行って奉公したって食っては行けるくらいに思っていた。
もちろん、親達の苦しんでいる様子に対して、それを口に出すことは、いかな彼女等でも出来なかったけれども自分等自身としてはそんなに辛くはなかった。
始終、心から離れない何か陰気な悲しいものがあると彼女等の感じていたのは、事件そのものの苦しさよりも、むしろ、大人達のように沈んで悲しく自分等を持して行かなければならないという感じが与えたものなのである。
「おめえんげでも、えれえこったなあ、まきちゃん」
「ああ……」
さも心を悩まされているように、ませた表情をして返事をしながら、実はそう云われても、とっさに何がえれえこったったのか心に浮ばないようなことさえあったのである。
いくら心の複雑でない禰宜様宮田だとても、子供等のように、そう単純に事を見て行くことは出来ないし、またそうかといって、お石のように、一目散に怨みこんではしまわせてくれないものを、自分のうちに持っていた。
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