、端々から腐り殺してやりたい! 祈り殺さずにおくものか!
手先はブルブル震えるし、どうやったらこのバサバサな藁が人形になるかも分らない。
いくらしても片端じから崩れたり解《ほぐ》れたりしてものにならない藁束に向って、彼女の満身の呪咀と怨言が際限もなく浴せかけられたのである。
引きちぎったり踏み躪《にじ》ったりした藁束を、憎さがあまって我ながら、どうしていいのか分らないように足蹴にしながら、水口まで来ると、お石は上り框《かまち》に突伏してオイオイ、オイオイと手放しで号泣した。怨んだとて、呪ったとて、海老屋の年寄にはどうせかないっこないのだということが、口でこそ強そうなことを云っていても、心にはちゃんと分っているから、お石は一層たまらない。
胸を掻き※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12、238−3]《むし》られるような心持になりながら、娘達をつかまえては泣き出し近所の者に会っては怨みを並べている彼女の、厚みのないへこんだ額には、一日一日と皺が増えて、鼻のまわりに泣き皺が現われた。
もうまるで子供ではない娘達は、両親の苦痛は充分同情していた。
が、さてどうしたらいいのかと
前へ
次へ
全75ページ中45ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング