みとも憤とも区別のつかないようにもしゃもしゃした心持が蘇返って来て、禰宜様宮田をどのくらい苦しめているのか。
そういうことは、彼の仲間の一人として考え及ぶ者はなかったのである。
慰められるにつれて、しんから底から自暴自棄になっていたお石は、ようよう気を持ちなおすに従って、体ごと真黒焦げに成ってしまいそうな怨みの焔が、途方もない勢で燃え熾って来るのを感じた。
何かしてやれ!
何とかしてくれたら、はあなじょうに小気味がよかっぺえ!
二六時中、人間のような声を出して怨念が耳元で唆《そその》かす。
よくも、よくも、こげえな目さ会わせおったな!
今に見ろ!
大黒柱《でえこくばしら》もっ返《けえ》して、土台石《どでえいし》から草あ生やしてくれっから!
いても立ってもいられないような気持になったお石は、ほとんど夢中で納屋へ馳けこんだ。
そして、まるでがつがつした犬のように喘いだり、目を光らせたりして鼻嵐しを吹きながら、そこいらに散らかっている古藁で、人形《ひとかた》を作りにかかった。
彼等の仲間では昔ながら恐ろしいものにされている祈り釘をこの人形に打ちこんで海老屋の人鬼の手足を
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