な貧乏おっかあをひでえ目に会わせくさる!
あんでも父っちゃんに買って貰っちゃ、呉れるちゅう金え、突返《つっけえ》すほどのお大尽《でえじん》たあ知んねえで、我が食うもんもはあ食わねえようにして、稼《かせ》えでたんなあ、さぞええざまだったべえて、
俺らも、もう毎日《めえにち》真黒んなって働くなあ止めだ、人う面白《おもさ》くもねえ、
後《あた》あどうでもええようにすんがええや」
朝でもふて寝をしたり、食事の用意もしないまんま、どこへか喋りに行ってしまったりするので、心のうちではそんなに母親を怒らせた父親を怨みながら、まだやっと十一のさだ[#「さだ」に傍点]が危うげに飯などを炊く。
暗い、年中ジクジクしている流し元に、鍋などを洗っている姉の傍に、むずかる六をこぼれそうにおぶったまき[#「まき」に傍点]が、途方に暮れたように立ちながら、何か小声で託《かこ》っているのを見ると、禰宜様宮田はほんとに辛いような心持に打たれた。
自分がいればいるほど、大混雑になる家から逃れるようにして、彼は出来るだけ野良にばかり出ていた。
けれども、別にそう大して働かなければならないほどの仕事もない。
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