な休みどころを見つけた。
そこだけは、いつも明るく暖かく輝いている。
辛かったら来るがいい……
泣きたくなったら、泣きに来い……
彼は、今まで俺はもうもう不仕合わせなけだものだと思っていた自分の心を――あの瘠せ犬があんなにも引掻きまわす自分の心を――ちゃあんと、どなたかが見ていらっしゃって、こういう休みどころを下すったのじゃああるまいかということを大変思った。
そのどなたかは、世の中じゅうの真当なことの持ち主であらっしゃる……
禰宜様宮田は、広場へ筵《むしろ》を拡げて、※[#「木+(綏−糸)」、第3水準1−85−68、212−19]《たら》の根を乾かしながら、大変仕合わせな、へりくだった心持で考えていたのである。
南向きの広場中には、日がカアッとさして、桔槹《はねつるべ》の影は彼方の納屋の荒壁を斜に区切って消えている。
二十日ほど前に誕生した雛共が、一かたまりの茶黄色のフワフワになって、母親の足元にこびりつきながら、透き通るような声で、
チョチョチョチョチョ……
と絶間なく囀《さえず》るのを、親鳥の
クヮ……クウクウ……クヮ……
という愛情に満ちた鼻声が一緒になっ
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