幻的な美は、身を引緊めるような謎を持っている。Wは、恰も女王に仕える騎士のような眼差しで、霧のような日光を浴びたマーガレットの横顔を偸見《ぬすみみ》た。この美くしさ! それは全く、情慾を超えた高貴であった。異性が、互に思いも懸けなかった崇高な美を対手のうちに、さながら霊感の如く発見する、稀有な瞬間の一つであった。匍匐《ほふく》する現実から截《き》り放たれて、彼は飛翔する光りもののうちに、永遠の女性の再誕を感じたのである。
 しかし、この霊的な、この世の者でないようにさえ見えるマージーの美に対する讃嘆は、殆ど無意識に彼の心の底に横っている、何ものにも換え難い安らかさ、確信ともいうべきものと相呼応して、一層彼を有頂天にしていた。それは、この尊むべく、愛すべき女性は、一生を徹して、自分に保証された者であるという落付きである。この宝物を、彼の掌から奪う何ものも、この地上には存在を許されていない。ただ、自分だけが、彼女の唯一の愛の対照として生きることができる。
 彼女に達する黄金の階子《はしご》は、ただ彼の鍵によってのみ開かれる。いかほどの高処に彼女が在ろうとも、彼だけは、的確に到達することがで
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