くないことが、案外なところに潜んでいたのを、先ずおしまが発見し始めました。学問こそないが、おしまも女である以上、妙に鋭い、思い込んで目をつけたらとても眼を逸しっこのない探求心というようなものを持っている。勇吉が清二が留守になってから、どうも始めて清二の嫁はまだ十八の若い、はにかみやの可愛い女であったことをしみじみ見出したらしい様子がおしまに分った。おしまは、時々きいという名のその嫁をひどくしかるように成った。すると、勇吉は、炉ばた[#「ばた」に傍点]でちびちび酒を飲みながら、
「そげえに若えもん叱るでねえよ、今に何でもはあ、ちゃんちゃんやるようになる、おきいはねんねだごんだ」
「何がねんねだ! ひとが聞いたらふき出すっぺえ。ねんね嫁け! お前」
 きいはつらく、涙ぐんで行儀よく手をついて、
「勘忍してくんさんしょ」
とあやまる。しおらしいのが、しまに決して快くなかった。
 その年の冬のことであった。勇吉の近所で青年団の集まりがあった。村の暮しは単調で、冬はなお更ものうい。よい機会さえあれば、男はみな酒を飲みたがる。青年団の集まりなど申し分ない口実だ。多勢集まり、けんかはしない約束をして
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