婦は相談して、おしまの遠縁の娘とその娘に似合の若者とを養子にした。夫婦養子をしたわけだ。元気者ではあるが年とった者ばかりの家へ、極若い男は兵役前という夫婦が加ったから、生活は華やかになった。勇吉もおしまも、老年の平和な幸福が数年先に両手を拡げて待っていると思った。村の者も、それを当然としてうらやんでいた。ところが、ものは順当に行き難いもので、養子が兵役にとられることに成った。勇吉やおしまは、少からず落胆せずにはいられなかった。勇吉達は生来の働きてだから、もち論身体の弱い野良仕事にも出られないような若者を家に入れるはずはない。充分野良のかせぎは出来て、厄介な、一年二年兵隊にとられることだけは免れそうな若者という念の入った婿選びをした――簡単にいえば、清二という若者は、左右の足の大きさが、普通の人の違いより幾らかひどく違っていた。勇吉は、兵隊靴はただ一つの型で作られるから、きっと、貴様のような面倒な足を持った奴は駄目だとはねられるに違いない、と、農夫らしく思い込んでいたと見える。清二は遠方の連隊に入営した。働きてが一人減った。――しかしまあよい。同時に食う口も一つ減ったのだから。が、余りよ
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