、別個の問題がある。あるものが芸術品としてつまらないということとはまた別に、絵画の問題に外からの作用がどう及ぼすか、それが絵画の真の発展にどう働くかというそのこと自体としての問題がおこって来る。

 出版の統制の基本的なところに、極めてこれに近い研究問題が存在するのではないだろうか。一般の印象にさぐり入ってみれば、今日までのところ、統制という響の与える感じは何かを切り下げること、切りすてることという方向でうけられていて、統制、ああじゃあこれまでより豊富になる、という方向への感じは、育くまれていないのが現実だろうと思う。
 出版の統制ということを、直感的に良書のゆたかな出版時代の到来としてうけている市民は、なかりそうに思う。統制でのこった本はどんなものかということに対する一抹の杞憂が、誰の胸のなかにも在るというのが正直なところではないだろうか。
 先頃、朝日新聞の学芸欄に林達夫氏が「日本出版文化協会」の準備部会のような場所で行われた投票の結果について書いておられた。『改造』『中央公論』などという綜合雑誌の発行所がその雑誌の属する第七部とかには出ていないで中央公論社は、『婦人公論』で第五部
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