丸いねつゝ夢も見であり
 紙風船をつきもてあれば丸き音に
       一寸法師とび出すかな
 友も来で時の長きをかこつ我は
   枯れはてし草見まもりてあり
 底のなき筒にてたゝみ望めやれば
   人の世は今 新たなるこゝろ

 一月十二日(月曜)晴
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〔摘要〕学校出席 お母様上杉家
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 今の女は男の御機嫌をとるために行きたくもないところへ行ったり、見たくもないものを見たりは必[#「必」に「(ママ)」の注記]してしないもんだと世の中のすべてのものに云ってやりたい。私はそれほど意くじなしじゃあない。きらわれてもどなられても自分の感情をまげて男の云う事をきいて御きげんなんかとってやるもんか。馬鹿にしてる。「怒るんなら怒りなさいよ」私は椅子にのっかって足をふりながら云った。あんまり下らない様で涙がこぼれた。
 私は今の気持を何かにまとめて見る。私一人の気持じゃああるまいと思う。うつむいて自分の影を見ながら枯れた芝生を歩き廻る事はほんとうに気持よく思われた。

 一月十三日(火曜)晴 暖
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