」はもっと短かくまとまって色の濃い優しげなものでなければいけない。何とはなしとりとめのない想が私の頭の中に一ぱいになってかえって苦しいほどだ。

 一月十日(土曜)晴 寒
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〔摘要〕学校出席
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 十二時が打つと学校から帰れるのが私達にはたまらなくうれしい事だ。何か私の胸の中にうごめいて居るもののある様にこみあげる笑いが私の頬に一人手にさし込んで来る、思って居る事をずんずんはこんで行かなければならない、三学期は短かいから学校のあるうちだけはがまんしようかとも思う。一日中の予定行事のうちに何にも出来やしない。
 少しやけになるほどはらが立った。しかたがないさ。まあこんな事を思って眼をつぶりながら私は毎日乾いた事に自分の手のあれるのを知って居るばかりだ。ある事はしなければなるまい。
「木枯の走り廻れば骸骨の仮面の恐れ我をすき見す」

 一月十一日(日曜)晴 寒
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〔摘要〕弟達有楽座、御両親様本郷座、古橋氏来訪
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 冬枯の黄なる日ざしに男の猫は
     
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