のぞく事は出来ない。池のあめんぼうの泳ぐのを雨かと驚いた時のほんのちょっぴりの時間は私にとって詩になりそうなものであった。給仕に出た女もかなり私の気に行[#「行」に「(ママ)」の注記]った。三味線の音をあこがれる様な気にさえなって居た。伝説の生んだ現実と云うのは細井さんの家庭から思いついた事だ。美しいものが出来ないとも限らない。
一月九日(金曜)晴 寒
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕学校出席、お雪ばばあ[#中條家の女中]が来る。
途中にて古橋さんに会う。
[#ここで字下げ終わり]
学校に行くと何故こんなかと思うほど平凡にあんけらかんとして日を送ってしまう。けれ共今日はそれ以外に私の心に大変に感じさせられた事があった、けれ共そんな事はなんでもないと思わなければならない。そんな事におしつぶされるより以上の勇気を熱心をもたなければならない。一日中そいでも私は青いかおをして居た。「錦木」も「千世子」も思っては居てもいまだに手をつけて居ない。来週からでもやらなければならないと思う。やり出せば気を入れてするがするまでを出しぶるのは私の何にでもつく癖だ。「錦木
前へ
次へ
全45ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング