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「夜」――とにかく私のものとしてはかなり重く出来て居ると信じるけれ共悪い批評をうけてしかめっつらをするほどのものではない。
芸術の尊さについて書いたもので私の初めての試みとしては少しは見られるものだとの批評があった。
「小鳥の如き我は」――モハメットの心を一寸はうけて居るんだけれ共「夜」に似た心持でもって書いたものだ。
「青い鳥」、その空想の生活に密接にふれて居ると云う事や又いかにも考えさせられる科白《せりふ》なり景色なりが多いのに驚く。くり返して読む必要がある、「誘惑」、モウパッサッン特有の婦人を描いて居る。
一月八日(木曜)晴 寒
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〔摘要〕学校始業式 浅草へ行く
「サアニン」を少し読む
(伝説の生んだ現実)を云う題だけを思う、
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何となくさわがしいそのくせすきだらけな本郷のかたい道を私はうつむき勝に歩いた。下らない事ながらこの日初めてあったかるい情なさは私の笑う声をひくくしたりいつもより深いあわれ味の心をおこさせたりした。午後から浅草に行く、茶絵雙紙の心持はいつ行っても
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