水の争を田の傍でして居るんだろう。
 東京の中央では水に使方を少し丁寧にするだけで夕方はザアザア湯があびられる。

 八月十二日(水曜)
 気をつけて水をやり虫を取って居るベゴニアの葉を皆鶏が食べて仕舞った。
 鶏はさぞ美味しかったろう。
 人間にもそんな事をするものが居る。

 私のあの大切なペン軸が見つからなくなってしまった。鼻のうすっぺらな髪をデコデコ結ったすれ切った女がたまらなく憎い。

 八月十四日(金曜)
 夜うすき先生が来て「汗も」をつぶしてもらう。
 みっともなくブツブツになった額にアルコールのしみこんだ気持はたまらなくよかったけれどいやに瓦斯の光線で輝くメスや変にトンがったものを見たら体中が一度につめたくなる様だった。
 先の頃始終指なんかをはらしてた頃は左《そう》まででなかったけれど今日は大変こわかった。
 自分に無関係な時それを見て居るといろいろな興味が湧くものだけれども――。

 八月十七日(月曜)
 お敬ちゃんが来る。朝早くから夕方まで居て行く。
 坂本さんへ手紙を書く。
 もう少し考えた手紙を書いてわかって呉れる友達が慾しい様だ。

 八月十八日(火曜)

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