ければならない事が沢山になって居る。
 そうしてそれをはきはきして居なければ居る事は出来ない。
 この頃は学校が面白い。
 それが何よりもうれしく思われる。
 甘ったるいかるいくすぐる様な悲しみが悪《いた》ずらの様に心の中にわき上って来る。うす暗《やみ》の夕方そうっと誰かの名をよんで見たい様な気もする事もある。

 一月二十八日(水曜)晴 寒
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〔摘要〕学校出席
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 夏になったらば――夏と云うものに私は大変今日はあこがれが多い。
 夏になったら庭の正面にけしと小さな可愛い花をまきましょう。まどわしのこもって居る様なけしの花を前にしてじっと、ふられた肌の様な夏の香りを嗅ぐ事はどんなにうれしい事だろう。冬の日ざしを見て居ればほんとうに夏がなつかしい。夏――、お前は何と云う力のある輝きのあるひびきをもって居るのかい若い私にふさわしい思いを御前はもって居る、――
 冬の日の縞目つくりててりてあれば影もしまめの我心かな

 一月二十九日(木曜)晴 暖
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〔摘要〕学校出席、古橋氏来訪
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