りと私はとてつもなくおどけた連想を起させられた。こすき先生ははっきり言葉のわからない言葉で見て[#「て」に「(ママ)」の注記]は意志の明かでない人の様に思われた。
 一種の暗いかげのある音楽家として久野先生は目立つ方である。

 一月二十六日(月曜)晴 暖
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕国語試験、母上会出席、衿をぬい始む
[#ここで字下げ終わり]
 夜の日に影なき道をたどり行けば人を呼びたき心地こそすれ
 美くしきまどはしよ汝我心のいまいる奥にひそみ居るらん
 まどはしは仮面つけて我心の精をくみて育ち行くなり
 ゆたかげに波うつ海の青さのみ恋しき心山にすみ居て
 くゆらしし香の煙に我心のかこまれて行く紫のくに
 夜の姫は衣のひだに白き足秘めし音なく我うでに来る
 疑よ! なつかしく汝思へどもあまりしかしき我はかなしや
 はれてさへ尚灰色の影をもつ冬の空のみ只かなしかり

 一月二十七日(火曜)晴 暖
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕学校出席
[#ここで字下げ終わり]
 私の心はいつでもはればれと澄んで希望に満ちて居る。
 けれ共私はしな
前へ 次へ
全45ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング