に居て味う何とも云われないかるいそうして美くしい悲しみは長い年の立ったあとには又たまらなくなつかしい思い出になるんでしょうねえ」こんな手紙を誰かに書きたかった。

 一月二十三日(金曜)晴 寒
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕学校出席
[#ここで字下げ終わり]
 寒いわりに気持のいい日だった、私は着物の衿を私のすきな様にゆったりと合わせながらすばしっこくあたりのものを見廻して居た。そうして気もかるかった。
 初秋の様にかるい風が私の髪を通して耳たぼをくすぐったり自分でも白いと知って居るえりをなでたりするのはほんとうにうれしい若々しい気がして居た。

 一月二十四日(土曜)晴 寒
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕学校出席、古橋氏来訪、数学試験
[#ここで字下げ終わり]

 一月二十五日(日曜)曇 暖
[#ここから20字下げ、折り返して24字下げ]
〔摘要〕女鴨が来る、渡辺家婚礼、こすき先生、久野先生来訪
[#ここで字下げ終わり]
 女鴨は始めてここに来ておどろいたおちつかない様子でまわりのにわとりを見て居た。女鴨のお嫁入りと渡辺さんの御嫁入
前へ 次へ
全45ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング