しげてとまり木に
チョコンと止まって居りました、
[#ここで字下げ終わり]
 私は自分が小鳥になったつもりでこんな出たらめをうたって足拍子をとって笑って……間もなくいつもにもなくはちきれるようなうれしさに
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「神様、どうぞ私の夜の床を御守り下さいませ」
[#ここで字下げ終わり]
 こんな事を小声に云って床に入った。
 この頃になくうれしい事ばっかりの一日、私は一寸しか、おしるしほかはたらかなかったけれども、今までにないうれしい一日で有った。こんな一日をうしろにおいてきぼりにするのがつらかった。

 七月二十二日 曇天
「何だか気の重い日らしい」目のさめた時に閃くようにそう思ったのがあたって一日中あくせくまるで、日向に石をつんでうめいて居る駄馬のように暮してしまった。
 随分下らない面白くない一日だった、
 日記をつけようと、ペンをにぎって居てさえもイライラするほどだった。昨日と正反対の心持で暮した今日一日が涙の出るほど可哀そうな様に思われた。
 新聞を大変気に入ったところがあったので切りぬいておいたら、紙くずと一緒されてしまった。
 たった一つの首人形をふみつぶさ
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