しく知って居て今に近い徳川時代から段々と逆にのぼる事にきめたのでひっぱり出したわけである。
いろんな本からひっぱりぬいちゃあ、書きとりにか□□[#「□□」に「(二字不明)」の注記]か、歴史上の概観だけをすっかり書いてしまう。大体割方は風俗史にならってそれからそれぞれを精しくやって見ようと云う目ろみである。徳川家康が江戸幕府をたてて徳川時代をつくるにほねのおれたように、紙の上に筆とことばでつくりあげるのさえ仲々苦しい事である。
「どうにでもやって見せる」斯う思って仕事にかかったんだからどうしてもやって見たいと思って居る。御ひるっからは、これですっかりつぶれてしまった。夜はソナタと讚美歌のいいのを弾いて見た。
七月二十八日
この頃は割合に沢山考えた、事柄に於ては……けれども、自分で満足するように考えの及ぼした事もなければ又自分で少しは実になりそうだと思ったものなんかは一つもありゃしない。それ丈頭を無駄に用《つか》ったわけだと今になって一寸口惜しいけれども又、相当に考える事も必用だからと自分でなぐさめて居る。こないだ書いた「魔女」の原稿は書き出しから気にくわず見るのもいやになったんで
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