えられているのを感じて、彼はこそばゆいような気がした。が、彼はそんなことを気にして、怒ったり笑ったりしてはいられなかった。どうかして、薬代だけは自分の力ですませたいと、彼は心をなやましていたのである。国へ送る分だけを、取っておけば済むとも思ったけれども、母親のことを考えると、それもならない気がした。また十円かと思うと、浩は苦笑しながらも涙がこぼれた。
 自分一人こうして病人でいるさえ、気が引けて、気が引けて堪らないお咲は、逗留したまま、また父親に床につかれたことは、年寄達に対して、身も世もあられない思いがした。病気も幾分かぶり返し気味で、神経質になっている彼女は、あれやこれや思いつづけると、このまま馳け出して、どこかへ体ごとぶつかりたいほど気が焦立った。
「何をどうしたか分らないけれど、こんなに弱るほど、この年のお父さんをいじめなくたって好さそうなものだのに……。そりゃあ、転んだからということだってあるけれど、ただちょっとつまずいたぐらいで、どうしてこれほどこたえるものか、あれが憎い、ほんとうに親不孝だったらありゃあしない!」お咲は口惜し涙をこぼした。はかどって癒ってくれない、自分自身
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