を鳴らしたてた。あまり急だったので、孝之進は少しくあわてた。そして避けようと一歩傍へ踏み出した途端、彼の歯の下駄はフト、おそろしく堅く、でこぼこな何かの塊りにふみかけた。平均を失った体と一緒に、足の下の塊りもゆすれる。ますます調子の取れなくなった孝之進の体は、二三度前後に、大きく揺れると、ハッと思う間もなく仰向きのまま、たたきつけられたように倒れてしまったのである。その瞬間孝之進は、後頭部と腰が痲※[#「やまいだれ+(鼾−干−自)」、第4水準2−81−55]するような心持がした。グラグラとして真黒になった心の前で、ちょうど覗き眼鏡の種紙が、カタリといってかえる通りに、今まで自分の前一杯にあった、幅の広い何物かが、微かにカタリ……と音を立てて、届かない向うにかえったように感じた。

        十一

 退院してからお咲の工合もあまりよくない上に、孝之進まで、あの夜転んだのが元で、どことなく体を悪くしてしまったことは、彼等にとってかえすがえすもの痛手であった。ほとんど敷き通しにしてあるお咲の床の傍に、もう一つ床を並べて、何ということはなしただ眠ってばかりいる孝之進の様子に家中は、ひそ
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